廣瀬量平の笛

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廣瀬量平

 

 

 

 作曲家の廣瀬量平さんは、おもしろいことに気がついた。それは要旨、つぎのようなことである。

 ――石笛は古神道で神霊を招きよせるのに使われた。能楽を、そうしたシャーマニズムの儀式の芸能化したものとしてみることは可能だが、まさに能において神霊が出現する時に吹かれる能管の鋭い音、とくにヒシギという最高音は石笛の音とそっくりだ。――

 これは彼の卓見というべきであろう。両者は内容的にも、音色的にも酷似している。とくに能管には、ノドといってわざと歌口と指孔の間に狭窄部が作ってあり、そのために篠笛やフルートのように正確なオクターヴが出ず、調子はずれになる。だから、能管は他の楽器と合奏することはできないし、謡との間も、つかず離れずの関係で進む。この不正確な音調の具合が石笛とよく似ている。わたくしは水戸の関さんの笛の音を実際に経験していよいよ廣瀬説を支持したくなった。

 

柴田南雄

日本の音を聴く ―― 四 石笛と能管【1】

 

 


Ryohei Hirose : Meditation (1975)